ETIC.インターンシップフェア

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坪井聡 さん

大学・学年(インターン当時)
明治大学3年次を休学
インターン先
NPO法人atamista
インターン期間
2011年4月~2012年3月

Q.坪井さんは、休学インターンに挑戦したのことですが、なぜ休学したの?

地域の現場にどっぷり入り込んで、まちづくりの活動をしたいと思ったからです。前々から故郷の長野県に帰って、まちづくりとかやりたいのかな~という漠然とした興味は感じていましたが、具体的に計画を立てたり、活動を起こすことは全くしていませんでした。そんな中、大学2年の夏にたまたま参加した大学主催の地域視察プログラムが転機でした。高齢化率48%、過疎も一向に止まらない問題山積の「30年後の日本の姿」であると言われている地域を訪れたのですが、そこで出会った地域の人たちの弾けんばかりの笑顔や温かい人柄が非常に印象的で、事前に抱いていたイメージとのギャップを感じたんですね。そのとき、“その地域に住む人がいかに幸せに元気に暮らしているか”が最も大事で、ハコモノだとかイベントよりも「ひとづくりこそが、まちづくりではないか」という思いを抱くようになりました。

その後ETIC.の長期インターンのことを知り、「何か本気になって一つのことへチャレンジし、小さくてもいいから自分で何かを成し遂げる経験を得たい!」と、インターンを決意しました。そしてインターン先の候補に上がったのが、自分の感じる思いと同じく、“ひと”に着目したまちづくりに取り組んでいるNPO法人atamistaでした。「この団体なら、自分が抱いている思いを実際の現場で実践しながら、確かめることができる。」そう確信し、どうせやるなら中途半端に半年やるのではなく、1年間やりきって成果を出したい。また将来のことを考えた時、社会人になってから活動に取り組むよりも、時間のある学生のうちに休学してでもチャレンジしたほうが、長期的には将来への投資になるという考えも抱いていたので、迷わず休学を決意しました。

Q.休学することに、迷いはありませんでしたか?

全くありませんでした。当時インターンを検討していたときは、それまで自分が取り組んできたことがいろいろリセットされて、自分の中での大学生活の軸が見えなくなっていた時期でした。そんな中、「自分のやりたいことや進路の方向性などが全く見えないまま3年になり、皆と同じく就活に突入する」という選択肢を選ぶほうが、よっぽど迷いというか“違和感”がありました。「それくらいならいっそ、大学飛び出していろいろ経験してこよう。」そう思ってからは、どうすれば休学できるだろう、ということしか考えていませんでした。

また、自分の親はどちらかというと、やりたいことをやらせてくれる人間だったので、休学やインターンに関しても結構すんなり許容してくれました。友達からも「あぁお前らしいんじゃない?」とあっさりと送り出してくれたので(笑)、心置きなく休学に望むことができました。もちろん生活費など資金面での親の支援を得ることは必要不可欠でしたが、それ以外でのハードルは全く感じませんでした。

Q.休学をするにあたり、何がハードルになりましたか?また、それをどう克服しましたか?

先述した通り、自分の心の中でのハードル・周りの人たちに対するハードルは全くなかったので、あとはいかに資金面で親の協力を得られるかということが問題でした。休学インターンを決意した時点では、まだ明治大学の休学費用は学費の半分だったので、1年間で約50万円の休学費用が必要でした。親から既に生活費をもう1年分負担してもらうことになっており、休学費用まで負担させる訳にはいかないと考えていましたが、その時点の自分の貯金では賄えない金額でした。「最悪、親に借金してでもやるしかない」と開き直ろうと思っていましたが、幸運にも同時期に休学費用が年間16万円になることを知りました。おかげで、休学費用も自分で捻出することができ、問題なくインターンに臨めました。

Q.休学中のチャレンジとして、なぜインターンを選んだのですか?

僕の場合は、休学のチャレンジでインターンを選択したのではなく、インターンの選択肢として休学インターンがありました。もちろん周りに、留学を休学して行なっている友達などもいましたが、自分は「実際の社会・地域の現場で長期間活動でき、かつ成果を生むことができる」インターンに魅力を感じ、自分の時間と身体をインターンに投資しようと決意していました。

Q.インターン先、インターン先の事業内容、そこで取り組んでいる仕事を教えてください。

NPO法人atamistaは、「100年後も豊かな暮らしができるまちをつくる」というミッションの下、熱海でまちづくりに取り組んでいるNPOです。現在の主な事業は、地元の事業者・市民が企画した体験交流プログラムを通じて、熱海の魅力を体験することができるイベント「熱海温泉玉手箱(オンたま)」と、空き家を調査・発掘して新たなコンテンツ創出の場として活用する「家守事業」、熱海の人口減少(特に若者の流出)に関して現状・課題を分析し、幅広く発信する「白書事業」の3事業です。私が最もメインに携わったのは、オンたま事業の一環で昨年秋に開催された「2011秋オンたま」のPJT立ち上げから、プログラム企画立案、実施、システム管理・運用に至るまでの一連の業務です。その後、白書事業の調査活動でヒアリング調査にも取り組んでいます。

また、立ち上げ間もない団体ですので、メンバー全員が全般的に雑務でも何でもやります。

Q.インターンをしていて面白かったことや、やりがいを感じたことを教えて下さい。

最も印象に残っていることは、オンたまの企画を通して、まちの人が変わっていく様子を間近で見ることができたことです。私たちの活動に携わる前は、「まちづくりなんて全く興味ない、むしろ偽善的なものだ」と捉えていた市民の方がいたんですが、atamistaと一緒に企画を作っていく中で、皆でその人の思いを理解し共有し、一丸となってプログラムを成功させるために努力しました。

結果、今までの活動では巻き込めなかったであろうまちの人の協力を得ることができ、なにより企画した人自身が次のチャレンジへ向けて一歩を踏み出そうとするまでに変わったことに「ひとはココまで変われるんだ!」と感動を覚えました。自分にとっても、以前から抱いていた「ひとづくりからのまちづくり」というアプローチで一つの成果を感じることができ、インターンをやっていて心から良かったと思えます。

Q.インターンで辛かったことや悔しかったことは何ですか?

インターン始まってからいろんな失敗をしてますが…特に大きく響いたのは3つですね。まずインターン開始1週間で、まちの人(しかも今まで大変懇意にして下さった方)とお話しした際、高圧的な態度を取ったが故に、その人に叱られ、atamistaとしても今まで築いてきた信頼に傷をつけたことです。その後代表・理事共々フォローしてくださり、事無きを得ましたが…代表に泣きながら謝ったことを覚えています。

2つめは、インターン開始半年後の面談で、将来の目標を振り返ったときに、本当に自分が取り組みたいことが小手先の言葉で着飾ったものにすぎないと気付かされたことです。自分ではわかっている“つもり”だったので、インターンに対するモチベーションもガタ落ちするほど、深く悩みました。が、ここで改めて深く考えるきっかけとなり、結果物事の本質を追求していく考え方、姿勢が身についてきたと感じています。

3つめは、白書事業に関して、自分がPJTのコアメンバーであったにも関わらず、何から手をつけていけばわからず、進捗が大幅にズレこんでしまったことです。atamistaとしても、ほぼ新規事業に位置づけられているものですが、どこかで代表からの答え・指示を待っていた姿勢があったと反省しています。進捗状況が遅れながらも答えが見いだせない2ヶ月間は本当に今までの辛さとは次元が違うものを感じました。

Q.学校との両立ではなく、休学して臨んだからこそ、よかったことはなんですか?

まず、絶対的に仕事に携われる時間が異なるため、仕事を与えられる機会、いろんな人と出会える機会などの「機会の総量」に差が開きます。その機会から何を得るかはその人次第ですが、そもそもの機会に恵まれたと感じる事は多いです。もちろん両立の場合、タイムマネジメントや自己管理などのスキルが自然と身につくことなどのメリットはあると思いますが、それは休学してても自分の意識次第でいかようにも学習することができますから。

また、休学することで、大学生としての時間が止まるため、就活などのライフイベントの影響を受けることなく、じっくりと自分の人生を考えることができます。この“じっくり”という落ちついた思考時間が大事だと思っていて、それぞれ納得の行くタイミングでインターンという選択肢を選べたり、より戦略的に自分の時間を歩むことができる点は、非常に大きなメリットだと思います。

あと、これは地域インターン特有のことだと思いますが、そこに住むからこそ得られる気づきや人種の多様性も感じています。まちの人を交えたMTGなど、皆さん仕事終わりの夜から行われることばかりですし、実はその後の飲み会が案外重要だったりします。特にまちづくりなど、その地域が最大の“顧客”である場合、その顧客のことを知るためにはやっぱり住むことの重要性は感じます。

Q.インターンで得たことや、インターンをする前と後で自分が大きく変わったことはなんですか?

まず、前よりも度胸がついたと感じています。大学生活では絶対に出会えなかったであろう、本当に様々な属性の方々とお話する機会に恵まれ、自分では苦手だと感じていた人とのコミュニケーションに対して、前よりも臆することが少なくなったと思います。あと、先述したような失敗やつらい思いをした経験をできたことは貴重な財産です。普通に学生生活を送っていただけでは社会での失敗という経験はできないだろうし、社会に出てから同じ失敗をするよりもリスクも小さいですから。

また、自分でも意外だったのが、勉強やインプットに対する意欲が非常に芽生えたことです。学生時代は、全く読書もせず、適当に課題をこなすぐらいしか取り組んでいませんでした。が、インターン始めてから、業務に携われば携わるほど、自分の知識や見識の浅さを突きつけられ、今までいかに勉強していなかったのだろう、と痛感しました。同時に、学生のうちに様々なことを吸収することのできる素晴らしさも味わったので、復学後、大学もうまく活用しながら自分のキャリアを歩んでいけるのではないかと思っています。

Q.休学を考えている人にメッセージをお願いします。

東大の秋入学決定のニュースは皆さんも御存知かと思いますが、今後、意識的にギャップイヤーを過ごすという選択肢はより社会に浸透してくると思います。これは追い風です。もし休学というものに資金以外のハードルを抱いている方は、今すぐにそのハードルを取っ払ってください。休学にデメリットはありません。私も実際に休学した今、心からそう実感しています。また、休学することにためらいやリスクを感じる人は、是非休学“しない”リスクもとことん考えてください。休学しないことで将来なにを得られないのか、という可能性を考えれば、今取るべき選択肢の参考になるはずです。

ただし、他の人もみな言っていることですが、休学をすること自体には全く価値はありません。むしろ時間とお金を投資しているので、何かしらのリターンを得られなければ、ただの損失に過ぎません。きちんとリターンを得られるようにも、ぜひ皆さんそれぞれの“仮説”を持ってください。インターンならば、なぜインターンをするのか?休学ならば、なぜ休学するのか?とことん突き詰めて、自分なりの仮説を持ってください。そして仮説のもと、実践し、休学期間終了後、それまでの足跡を振り返ったときに、休学前とは見違えるほど変わっている自分に出会えるよう、自分の納得の行く選択肢に向かって突き進んでください。応援しています。頑張って行きましょう!